短期連載3「連休前の地獄。限界の先にある人の温もり」

 

〜 前回のあらすじ 〜

ナビに目的地を入力しても、ナビが古すぎてヒットしない・・

不安の中高速を走らせるも、大渋滞に巻き込まれてしまい、刻一刻とタイムリミットが迫る

それでもなんとか、荷物は受け取れそうな感じ

遂に、ゴールが見えてきた

ひとけの無い受付窓口

目的地に着き、倉庫の出入口付近に車を停めた

「書類、免許証、名刺と…」

荷物を持ち出し、看守のいる受付へと小走りで向かう

立ち並ぶ倉庫の隙間から、ビュンビュンと吹き抜ける潮風が、体を巻き込むように流れていた

外は寒い、とにかく風が寒いのだ

 

「すいません、荷物の受け取りで本日連絡したものなんですけど、、」

看守のおっちゃんは、はいはいと慣れた手つきで、書類の記入と免許証を提示するよう言ってきた

手続きが済むと、おっちゃんがこう言ってきた

『入場ゲートでカードをかざし、奥の通路脇にある電話を使って、中にいる人へ連絡してください』

そう言ってカードを手渡された

建物の中へ入ってみると、奥までずっと廊下が続いている

ひと気の無い、殺風景なところだ

 

少し進んで左を振り向くと、そこには半個室のような部屋があり、窓の側に電話が置いてあった

そこでおっちゃんに言われた通り電話をかけた

トゥルルルル・・・

『もしもし、あ、はいはい、今行きますね』

受話器越しの男性に言われた通り、しばしその場で待っていると、ガラガラと窓が開き、若い兄ちゃんが現れた

『受け取りの件ですよね?話は伺ってます。お持ちしますので、外で待っていてください』

 

良かった

時間はどうであれ、無事に受け取れることが確信できて、心底安心した

 

外で待っていると、大きな台車に積まれた荷物が運ばれてきた

傾いた歩道と強い潮風のせいで、その兄ちゃんは台車に潰されそうになっていた

ぼくは台車に手をかけ、力いっぱい引っ張り上げ端に寄せた

車の脇に荷物が並べられていく

箱の数を数えた後、兄ちゃんは軽くお辞儀をしてその場を去っていった

 

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書類と一致しない荷物

荷物には、1から10まで番号が振られている

適当に置かれた箱を番号の通りに整理し、経理の子から預かった書類に目を通す

箱には番号の他、品番、商品名、色、そして入り数がプリントされている

暗闇の中、遠く離れた街灯の灯りを頼りに、書類と荷物を照らし合せていった

 

すると事件が起きた

箱に書かれている数と、書類に載っている数が一致しない

1つ多いものもあれば、3つ少ないものもある

順番に見ていったが、結局正しいものは1つも無かった

 

「はぁ、あれほど間違えるなと言ったのに・・・」

 

メラメラと怒りが込み上げ、箱を蹴飛ばしそうになったが、大きく息を吐き、なんとかその場は堪えた

(とにかく目の前にあることだけに集中しろ)

そう言い聞かせ、箱を全て開封し、商品の数を数えることにした

 

暗闇の中の検品、はっきり言ってまともに見れたもんじゃない

それに見知らぬ土地で、こんな作業を行った事なんて未だかつてない

仕方ないのは分かっている

でも、何度も何度もため息が漏れた

 

作業を終える頃、既に時計は20時を回っていた

荷物を車に詰め込んだ後、客に1本電話を入れた

「恐らく1時間ほどで到着できるかと・・・」

実際はそんなにかからない

ただどうしても、トイレが我慢できなかった

 

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手厚い歓迎

道はとにかく空いていた

この時間に、ましてや倉庫街を走る車なんていない

せいぜいトラックぐらいだ

 

事故や渋滞などに巻き込まれることもなく、30分ほどで客先へ到着した

 

ビルの前に車を停め、ドアの側にあるインターフォンを押す

「すいません、今到着致しました。大変長らくお待たせしてしまい申し訳ございません」

しばらくすると人が降りてきた

1人、2人、3人・・・

社員総出だ

 

気づけば自然と、バトンリレーが始まっていた

荷物がどんどん運ばれていく

車にぎゅうぎゅうに詰め込まれていた荷物はあっという間に無くなり、事務所は入ると綺麗に並べられていた

 

「この度は大変ご迷惑をおかけして申し訳ございません」

『いえいえ、大変でしたね。わざわざ届けて頂いてありがとうございました』

少し話をし、その場を離れようとしたその時だった

 

『そうそう、ちょっと両手出してもらえます?』

社長がひょんなことを言ってきた

でも言われるがまま、両手を広げて見せた

すると社員の方が、ぼくの手の平にポロポロと何かを落としていった

 

お菓子だ・・・

 

『遅くまでお疲れ様です。何も食べてないですよね?よかったら持って行ってください』

 

まさか、こんな事をされるなんて

想像もしてなかった出来事に、一瞬固まってしまった

「あ、ありがとうございます!」

嬉しくて手が震えていた

気づかれないよう、ギュッとお菓子を握りしめた

それから別れの挨拶をし、その場を後にした

 

車に戻り両手を広げてみると、そのお菓子はなんと「煎餅」だった

見てるだけでよだれが止まらない

なんせ昼から何も食べて無いんだから

急いで袋をこじ開けた

 

煎餅をほうばった瞬間、口の中いっぱいに醤油の味が広がった

しみた

全身でうまさを感じた

気が抜けたのか、「はぁ・・・」と、大きなため息が漏れた

 

時計に目をやると21時

外は真っ暗な上、静けさが漂っている

今日はいろんなことがあった

イベントが多すぎて心底疲れた

ただ、限界の先には、大きな温もりが待っていた

 

これ以上なにも起こらないで欲しい

そう願いつつ、またこんな日がやってきたらいいなと、期待してしまう自分がそこにいた

 

 

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